3年目のMAKE INZAI ORIGINALは、なんとアニメを制作中!
関係者たちが語ります。
メイキング・オブ『印西あるある物語』
「あるある4コマ」アニメ化への道。
2021年のMIOでは「印西あるある4コマ」を原作とした本格派アニメ作品を制作中。そこで12月の公開に向けて、関係者への連続インタビューを行なっている。2回目の今回は、その制作の現場に突入。本作監督として制作真っ最中の青木悠氏にお話をうかがった。気鋭の若手監督が語る、「あるある物語」の秘密とは? そして、アニメの作り手からみる「印西市」とは?
その2
「印西あるある物語」制作の秘密
インタビュー 監督・青木悠氏
アニメの制作現場の裏側
ーー 今回取材の前に絵コンテを見せてもらいました。その段階で既に、「あるある4コマ」が動くんだ! という臨場感があり胸ときめきます。さて、まずは基本的なところからお聞きしたいんですが……いわゆるアニメの制作って、どのように進められていくのでしょうか?
青木:制作のスタイルは、様々です。テレビアニメにしても、止まっている絵をデジタルで動かしたり、一枚一枚手で描いて送って動かすなど、それぞれ全く違います。でも、基本的には集団作業。10分、20分のアニメを作るだけでも、通常は100人くらいのスタッフが関わります。
ーー そんな大人数なんですね。色々な工程を手分けしてやっていくんでしょうか。
青木:そうですね。今回は例外的に、絵コンテから、アニメーションの実際の映像、背景まで含めて、僕を中心とした少人数のチームで全部描いています。この規模の作品だと通常100人は集めるのですが、今回は10〜20人くらい。その代わり、身近で感覚を共有しやすいスタッフに声をかけて進めています。
―― つまり、新しいスタイルなんでしょうか?
青木:そうです。私のキャリアでは5作目くらいなんですが、今回はちょっと特別。最初に「あるある4コマ」の漫画をそのままアニメで動かそうとイメージしました。色味や背景の雰囲気もすべて、原作をそのまま表現したかったんです。漫画はモノクロが多いですが、原作がカラーだし、細やかな部分にも中村さんのこだわりがはっきり出ていた。だから「アニメはこうなりました」ではなく、「このアニメで漫画が動いています」という表現をしたいと考えていました。
ーー なるほど。漫画では、表に出てこなかった設定や背景が結構あった感じがします。それをナチュラルに描き出したということですね。
青木:どのキャラクターも個性が際立っていて、素敵でした。作品の方向性としても「印西市」自体をアピールするより、変わったキャラクターが活躍することで、印西市の面白さを間接的に伝えていた。「印西推し」ではなくて漫画としてピュアに可愛くて面白かったので、アニメにもしやすかった。
ーー でも「あるある」って明確な定義が実はないから、映像で分かりやすく伝えるには、細かいニュアンスが難しそうですね。
青木:その通りです。でもいいポイントになったのは「あるあるメーター」ですかね。シナリオは先にあって、それを絵としてどう味付けするかという調整だったので、そうした随所の道具を表現することで、うまくストーリーを動かせてるかなと感じています。
整いすぎている街、印西市
ーー リサーチで実際に印西市に行かれたとのことでしたが、どんな印象でしたか?
青木:実は僕、印西市とはとある縁があって、たまにうかがっては、千葉ニュータウンあたりでご飯を食べたりしてたんです(笑)。だからもともと親しみがあって、風景自体は割と頭に入っていました。でも改めてリサーチをして、緻密な計画で開発されている街だなと思いました。
ーー それは奇遇。アニメにはしやすいんですかね?
青木:アニメの世界観において、風景は大事です。自然に形成されてきた街と、事前に人の意図や設計があって形成される街って、全然違うんですよね。下町の風景と、新興住宅地の風景なんて全く違いますよね。すべての規格がパズルのように収まっているみたいだし、カーブも、道の幅も一緒だし、街路樹の並びも、綺麗に揃っている。空を見たときにも、全部建物の両線が一直線で全部切られていたりするんですよね。
―― 見方によっては、異様なほど整っているというか……。
青木:そうなんですよね(笑)。大きなポイントは、電信柱。電信柱って基本的に一本立てて、そこに電話線や通信線などが付いていくんですけど、実は計画されていない街ほど、電信柱の線の出方がカオスになってくる。それこそ新宿のゴールデン街の電信柱なんて有機的で、傾きながら何本も電線が出てたりして(笑)。
―― 確かに。ある種の自然みたいに。
青木:千葉ニュータウンは電信柱が綺麗だし、一個の電信柱から二本しか出てなくて、それが延々と並んでいて、風景がどれも整っていました。と思いきや、少し郊外へいくと昔ながらの野山や田んぼや沼があって。その緩急が面白いです。だから、新興住宅地と、おおらかな自然、そこに闖入する宇宙人が全く違う色を落としますから、この三色の世界観を意識しています。不思議だけど、とても魅力的なコントラストです(笑)。
「あるある」ってなんだろう?
ーー ますます楽しみです。ちなみに印西の地域性については、何か思い出はありますか?
青木:そうですね……いわゆる「新住民」と「旧住民」でいうと、新住民は僕らの延長にある人たちだなとは想像がつきます。働く場所が都内で、一戸建てを買おうという時には、候補にいれたいですね(笑)。
ーー 印西市のバランス感も悪くないというところでしょうか。
青木:どうでしょう(笑)。でもたとえば他の県や地域で連想される「自虐」と、千葉の「自虐」のニュアンスの独特さは面白いなと思いました。いわば関西のお笑いのように自分をいじめる感じではなくて、千葉では、クスリとお互い笑い合うくらいの「自虐」なのかなと。どこか穏やかさを感じます。
ーー それは新鮮なご意見です。でも何となく、そうかもしれないですね(笑)。では、最後になりますが、アニメを見られる方に何かメッセージをお願いします!
青木:うーん、制作中なのでまだ考えている部分もありますが、老若男女どなたが見ても面白がれる作品を目指しています。特に、子供が見ても楽しいアニメにしたいな。大人に面白いと思わせるのも大事なんですけど、子供がわかんないことはやってないつもりです。アニメファンの性質というのも様々ですが、気づかないうちに偏っているところはどこかにあるだろうなと感じていて。だから、これはそうした偏りへの挑戦でもあります。公開のあかつきには、是非ご感想いただけるとうれしいです!
PROFILE
青木悠 Asurafilm所属。アニメ監督、アニメーター、演出、イラストレーター。得意分野はミリタリー、モンスターデザイン全般。ちなみに沖縄出身で、兄もアニメ監督を手がけている。沖縄出身のアニメ業界関係者はかなり少ないそう。
印西市のアニメ『印西あるある物語』絶賛公開中です!
アニメ「印西あるある物語」メイキングインタビューをお楽しみいただけます!
千葉県北西部に位置する印西市は、千葉ニュータウンをはじめとする住環境と豊かな自然に恵まれ、「住みよさランキング」7年連続の全国1位も記録しています。しかし、そんな“住みよさ”の一方で、個性があまり目立たない……という声もちらほら。
「MAKE INZAI ORIGINAL」は、そんな印西に市民の手で“印西らしさ”をアピールするモノ・コトを作り出し、印西の新しい魅力を発信していくプロジェクトです。
新しい「印西のオリジナル」をアピールするイベントやワークショップを、継続的に行なっていきます!